ねむれないよるのうた
『ねむれないよるのうた』
振付・照明:児玉北斗
出演:妙高地域の12人のダンサーたち
音楽:児玉北斗, ちくわぶ, Frédéric Chopin, Arcade Fire
ステージ装飾:出演者全員
初演:2019年9月22日 妙高市文化ホール(新潟県)
「MYOKO SKOOL -ダンシング・モンスター!越智雄磨セレクションvol.2」
(プログラム・ノートより)
時々、自分のことがわからなくなって、なかなか眠れなかったりする。
人は眠れない時に己の存在と直面する。そして眠る時に人は名を失い、私ではない誰かになるのだ、とレヴィナスという哲学者は言いました。それなら、自分がわからなくなって眠れない、という時こそ最も自己と向き合っている状態なのかもしれない。今日の私は、昨日の私、そして明日の私と同じ「わたし」なのでしょうか?自己のアイデンティティと「他者」をテーマにして、この作品を作りました。はっきりとした物語があるわけではありませんが、舞台の上に乗る人々と、それを見守る人々が「共にある」事のリアリティが浮かび上がってくればいいな、と思っています。
期待と不安を胸に、12人のダンサーたちと一緒に過ごした9日間。毎晩なかなか眠れませんでした。でも、この日々を通して、みんなで少しづつ、変われたような気がしています。
2019年9月
児玉北斗
(公演チラシによせたメッセージ)
こどもはよく、ダンスをおどっています。でも、大人になると、ダンスがよそよそしいものになってしまう気がします。一体、なぜでしょうか?身体が、いつのまにかコントロールすべきモノになってしまう。そういうプロセスがあるのかもしれません。ダンスをする子供の圧倒的な他者性を目の前にして、大人はとまどう。なにかはちゃめちゃで、コミカルで、抑えることができない、そういう「動く身体」がそこにはある。大人になり、ダンサーになるとは、そういうダンスができなくなるということなのかな、と時々思います。でも、そうでなければいけないとは思わないのです。なので今回は、色々なものを抱えながら日々変化し続けている、若いみなさん達と一緒に、ダンスをつくってみたいと思っています。僕にとっても、大きなチャレンジです。「モンスター」とは、作り上げられた「他者」のイメージです。そこに私たちは恐れを抱く。でもそれは、同時に自分自身が失ってしまった何かを指し示してもいる。「ダンシング・モンスター」たちは、その事を私たちにつきつけてくれるのかもしれません。(児玉北斗)
毎年、振付家をお招きして、トークと実演を行うシリーズ「MYOKO SKOOL」。今年フォーカスを当てるのは「ダンスとアイデンティティ」です。世界トップレベルの数々のバレエ団に所属して活動してきた、ダンサー・振付家の児玉北斗さんをお招きします。バレエ一家に育ち、幼少よりバレエの英才教育を受けてきた児玉さんは、世界で5番目に古いバレエ団であるスウェーデン王立バレエ団にファースト・ソリストとして活動されてきた一流のダンサーです。また同時に、ストックホルム芸術大学や立命館大学でダンスの学術的な研究を行っている研究者でもあります。児玉さんのように実践と理論の双方に通じ、ダンスを創作されているアーティストは国際的に見ても稀有な存在といえるでしょう。今回、児玉さんのこれまでのダンスの活動についてお話を聞くとともに、児玉さんとダンスが好きな妙高の子供たちとのクリエーションの成果発表「ダンシング・モンスター!」を見ることができるまたとない機会です。ぜひお見逃しなく。(越智雄磨)