Wound and Ground (β ver. 2022)
Wound and Ground (β ver.)
ダンス・レジデンス2022 児玉北斗 成果発表会
☞ 2022/5/21(sat.) 12:30〜15:30
@穂の国とよはし芸術劇場PLAT主ホール舞台上
☞ メンバー
黒田健太、児玉北斗、武田真彦、竹宮華美、田中すみれ、
藤田彩佳、益田さち、渡辺瑞帆
☞ Special Thanks
田中涼、村上真里奈、本間元裕
穂の国とよはし芸術劇場スタッフ
主催|児玉北斗・公益財団法人豊橋文化振興財団
共催|豊橋市
☞ Wound and Ground (β ver.)について
前作『Pure Core』(2020年初演)は、2010年代の日本における風営法のクラブ規制と義務教育におけるダンス必修化を背景として、欲望の対象であると同時に排除の対象でもある「踊る身体」という存在の矛盾的なあり方を主題としていた。
そこでのリサーチを端緒として、この『Wound and Ground』はスタートした。能動的に踊るのでもなく、受動的に踊らされるのでもなく、クラブでなんとなく身体が揺らぐように「自らの身体を座として踊りが起こっている」というダンスの中動態的・憑依的な身体感覚こそが演者と観客の間に分有されるのであり、それが共感や嫌悪を引き起こすのではないか。そのような仮説から、地面を「動かそうとすることで自らが動かされる」というタスクを長時間
にわたり遂行する事を決めた。
そのミニマルかつ粗暴な動きは、「をどり」とは悪霊を地面に抑え込もうとする行為だと論じた民俗学者・折口信夫の言葉を想起させる。ダンスは意志や操作に服従するものではなく、むしろそれらの限界においてたち現れるものだ。悪霊は完全に地面に抑えつける事ができないからこそ、そこに反復的なダンスが生まれる。手段が目的とすり替わり、行き先を見失ったループが持続的なミッションとして儀礼的に継承されてゆく。
現代社会では能動的な生産活動にのみ価値が置かれ、非生産的に「いる」ことは否定されてしまう。時間の流れを体感し、暇で退屈な時を過ごすことはどんどん耐え難いものになってしまっている。そんな世界における一つのあり方として、外部から区切られた円環的な時間の中で無謀にエネルギーを消尽するだけの存在を肯定し、それに付き添う事はできるだろうか。
このβヴァージョンでは3時間という区切りを設け、構築と破壊が反復的に共存する儀式の空間を立ち上げる。怠惰かつドラマチックな出来事の流れをぼんやりと見守りながら、我々はいつの間にか特別な感覚を分有し、「効率性を追求せよ」という声に抵抗するプロジェクトの共犯者となっている。
2022年5月
児玉北斗
☞ メンバープロフィール
黒田健太 Kenta KURODA
‘95年夏、愛媛生まれ。京都を拠点にダンサーとして活動しています。2018年から初対面の他者とインスタントな関係を築く”セッション”を各地のストリートで行い、直後から生じる複数の現実に直面するための実践を行っています。
児玉北斗 Hokuto KODAMA
京都を拠点とする振付家/ダンサー/研究者。2001年よりダンサーとして国際的に活動、ヨーテボリオペラ・ダンスカンパニーなどに所属しマッツ・エックらの作品にて活躍した。振付家としてもストックホルム芸術大学DOCHにてMFA in Choreographyを取得、『Trace(s)』(2017)、『Pure Core』(2020)などを発表し高い評価を得た。2021年からは芸術文化観光専門職大学(兵庫県豊岡市)の専任講師として、ダンスをめぐる実践・研究・教育に取り組んでいる。
武田真彦 Masahiko TAKEDA
京都を拠点に活動する音楽家、アーティスト。
サウンドインスタレーション作品をはじめパフォーミングアーツ、伝統文化のための音楽制作を行う。また、音楽家の江島和臣(Kafuka)と、「継承すること、調和すること」をコンセプトに、メディアラボ 「Laatry (ラットリー)」を運営。
これまで主な作品として、「MITATE」(2019)、「CYCLEE」(2020)、「CONiCENCE」(2021)などを発表。
竹宮華美 Hanabi TAKEMIYA
愛媛県出身京都在住。フリーランスでダンスやアート等のイベントマネジメントを行う。京都造形芸術大学舞台芸術学科卒業。2015年〜2021年度まで京都芸術大学舞台芸術研究センターに所属。文化や芸術を通して生まれる「対話」に興味をもち活動する。2022年秋ごろから1年間、台北で語学留学を予定。
田中すみれ Sumire TANAKA
4才より金澤志保バレエスタジオでクラシックバレエを習う。京都造形芸術大学舞台芸術学科卒業。在学中に寺田みさこ、ヤザキタケシ、余越保子等に師事。また siroとして創作活動を始める。2017年より3年間黒田育世主宰のBATIKに所属。2020年より名古屋に拠点を移す。
藤田彩佳 Ayaka FUJITA
5歳からクラシックバレエを始める。高校卒業後スイスのルードラべジャールバレエ学校に入学し2年間バレエ、グラハムテクニックの他剣道、歌、パーカッション等を学ぶ。2年間ポルトガルのkale companhia de dançaに所属。
帰国後Noism準メンバーとして在籍し、現在関西を拠点に活動。島地保武、児玉北斗、ジゼルヴィエンヌらの作品に出演。2021年festival d’automneに出演。
益田さち Sachi MASUDA
ダンサーとして関西を中心に活動する。クラシックバレエ・ボールルーム・モダン・ジャズなど多様なジャンルの舞台経験から、既存の「ダンス」が示すもの・排除するものへの興味を持つようになったことが自身のダンスに繋がっている。2015年に斉藤綾子と…1 [アマリイチ] を結成。
2018年京都芸術センターCo-programカテゴリーD「KACセレクション」や「ダンスの天地 vol.01」に選出され新作を発表。2021年には長野県芸術監督団事業NAGANO ORGANIC AIRにて安曇野市に滞在し、公演やイベントを行った。
渡辺瑞帆 Mizuho WATANABE
セノグラファー・建築家。あらゆる設計行為を通して場を劇化させることを志向している。兵庫県豊岡市で「空家・空店舗・空地の活性×演劇」をテーマに活動し、2021年に、建築家、映像作家とともに豊岡と東京を両拠点とするアーキテクト・コレクティブを立ち上げ。合同会社ガラージュ代表/劇団青年団演出部/豊岡演劇祭コーディネーター/一般社団法人豊岡アートアクション理事。https://garagearchitects.com/
☞クリエイション経過
2022年1月@穂の国とよはし芸術劇場PLAT(愛知)
2022年3月@芸術文化観光専門職大学(兵庫)
2022年4月@Chim↑Pom展:ハッピースプリング(東京)
☞ グラフィックデザイン|村上真里奈(グラフィックデザイナー)
中毒性のある揺れ動きつづけるダンスから着想を得て、いろんな角度の揺れ動きを表現しました。自分の手を揺らしながら書いた文字をデータ化し、さらにそれをカットアップして複数の層とずれを生み出すことによって、揺れ動きつづけることで変わってゆく地形をデザインに落とし込みました。